今回は【親向け本】について
言葉の力を感じる1冊です
こんな方におすすめです
- 子育てに関わる親、地域、教育関係者の方々
- お子さんの国語力が気になる方
- 社会に対しての不安がある方
特に教育に関わる方が読まれたら、納得いくことが詰め込まれています。
本の内容をざっくり紹介
以前、今井むつみさんの「親子で育てることば力と思考力」を紹介しました。
この本はこのことば力と思考力が不足してしまったばかりに起きてしまった、胸が痛む事件のルポも複数掲載されています。
国語力とは
文部科学省であげられているのは4つ
- 考える力
- 感じる力
- 想像する力
- 表す力
下の図は文部科学省で記されている『発達段階に応じた「国語教育における重点の置き方」のイメージ図』です。表す力は全体に影響するため記載されていません。
図からも分かるように、この4つの力を支えるのが語彙力です。
語彙力がないと4つの力を発揮することができません。
ただ、語彙力は語彙を暗記すればいい!というわけではないのが大事なポイント
語彙力の実につく道筋については前でも紹介したこちらの今井むつみさんの著書がおすすめです。
端的に言えば、「よりよく生きるためには国語力が必須!」
語彙力が豊富にあると…貧弱だと…
以下は本(ルポ誰が国語力を殺すのか)に紹介してあった文章の引用です。
これ読んだとき、「こんな場面ある!!」と過去を思い出してました
語彙力乏しい子の傾向…
深くを考えずに細部を曖昧にしているため、誤解が生じてトラブルに発展することがしばしばある。
引用『ルポ 誰が国語力を殺すのか』 石井光太
語彙力が豊富な子の傾向…
感情や事象を的確な言葉に置き換えているので、物事を正確に把握することができている。だから無意味な誤解から衝突が生じるようにはならない。
引用『 ルポ 誰が国語力を殺すのか』 石井光太
語彙が少ないから物事を正しく表現できない。
語彙が少ないから相手の言っていることを正しく理解できない。
そのため、誤解からトラブルにつながっていってしまう。
語彙が少ない子の例でいけば、
Bの『(店員が)くそウザ」だったのが、Cが自分に言われたように感じて「つーかお前がウザ」の返答につながり、B「は、死ねよ」とどんどんトラブルにつながる会話になっていってしまっている。
言葉が漫画のように目でわかる形で残っていけば、振り返りもしやすいけれども、言葉は目に見えない。
当たり前だが、耳で聞き取って、脳で理解して会話することになる。
ということは、語彙が少なかったり、思考力がないと相手との正確なコミュニケーションは難しい。
語彙力と家庭環境の関係
語彙が育つ基本は家庭。
特に語彙の成長スピードが速い乳幼児期をどんな家庭で過ごすかは重要。
本の中では虐待(ネグレクト、身体的、心理的…)を受けている家庭の場合、言葉を発する事に対して
- 怒鳴られる
- 暴力
- 無視
等の行為が行われるため、「言葉によるコミュニケーションの失望」をしてしまい、語彙の獲得が上手くできない、ということが書かれていました。
これは、もんの体感ですが、今は虐待ではないにしろ、動画やテレビ、スマホゲームでの子育てが増えていることもあり、家庭内での会話が不足して、語彙の獲得が遅れているということも感じる。
(この本にはネットやゲームの世界についても語られています。)
言葉はグラデーション
一つの言葉のもつ意味はとても広い。
例えば「赤」といっても、相手がどの赤を言っているのかは詳しく聞かないと正確なものはわかりません。
同じように「喜び」でも
- 歓喜する
- 小躍りする
- はしゃぐ
- 浮かれる
- 悦に入る
- 満面の笑み
と言葉を分けることで喜びの度合いが違うことがわかる。
文章中に少年院の言語回復プログラムが紹介されており、その中で次のような文章があった。
人とのコミュニケーションを取る時、自分の言葉が正確につたわっていると信じ込むのは危険だ。逆に相手が理解てきていないという前提に立って、どういう表現なら伝わるかを常に意識してしゃべらなければならない。それをすること、無用な勘違いや衝突を防ぐことにつながる。
引用 「ルポ 誰が国語力を殺すのか」石井光太
相手に伝わっていると思い込むから、「なんでわからないの?」と不満が生まれてしまいます。
これは
- 親子
- 夫婦
- 友達
- 職場
と色んな所であてはまることです。
「相手が理解できていない」という前提に立つだけで、自分の行動を変えることができます。
子どもの国語力を高める場所
第一は家庭であってほしいし、次は教育現場であってほしいところですが、これがなかなかうまく機能していないということが分かる事例が多数取り上げられています。
誰かに丸投げするのではなく、まずは自分が子どもにできることを取り組んでいく必要性を感じました。
国語力を育てるために親や周囲ができること
わたしが読了後に親や周囲ができるはじめの一歩はこの3つだと考えました。
周囲には色んな誘惑が多数存在することを認識すること
今はTVやSNS、動画配信、ゲームと魅力的なものが多く存在していて、それらは、私たちの時間や労力を使わないとできません。
気が付くと「あれっ!もうこんな時間!」となることもしばしば。
これらは「もうしすぎなので、消えます。」ということはしないので、自己管理が必要となります。
大人でさえ熱中してしまうものを、子どもが熱中せずにいられるわけがないのだから、子どもが自己管理ができるようになるためには、保護者が意識して時間管理をしておく必要があると思います。
うちのこはもうハマりすぎて止められない…
というかたは、今諦めずに、その事実に向き合う方が後々楽になると思います。
この本もおすすめでしたので、悩んでいる方は一読してみてはいかがでしょうか。
家庭内での会話を大切にすること
言葉の習得の基本は家庭である。と複数の書籍を読む中で確信を持つようになってきました。
安心できる環境で自分の気持ちを言葉に出すことを繰り返すことで、子どもは言葉への信頼を高めていくのだと思います。
まずは、今日あったことを聞いてみる。「傾聴」を大切にしようと思います。
読み聞かせを行うこと
日常の会話だけでは、言葉の幅はなかなか広がりません。
ここで登場するのが絵本。
子どもたちは読んでもらうことで、自分で読むよりレベルの高い本に出合う機会を得ることができます。
私は、できるだけ長く読み聞かせを続けていこうと決めました。
感想
前半は読んでいて、「恐怖」を感じる部分も多々ありました。
子どもたちが生きる社会はこんなにも危険なところなのだろうか、と思うような事件が書かれていたからです。
当たり前ですが、親は子どものそばにずっといて子どもを守っていることはできません。
それなら、子どものもつ「言葉」という武器をできるだけ質のよいものに育てておきたい。
子どもが自分で生きていける力をつけておきたいと思えました。
後半は国語力を高めるための質の高い教育を行っている事例があげられていました。
これらを読むことで、社会への一筋の光をみることはできました。しかし、これがすべての学校や教育現場で行われてるわけではないということも知っています。
親にできることは誰かを頼るのではなく、自分でできることを子どもに行っていくこと。
我が家の子育てを振り返るよい機会となりました。
分厚く、手に取るには怖い言葉が表紙に並んでいますが、是非多くの子育てに関わる方、教育者に読んでほしい1冊だと感じました。